パイロットが解説するコックピットレイアウト

BOEING COCKPIT

ボーイングなどの旅客機のコックピットを7つのエリアに分けて、パイロットが実際に何を見て、何を操作しているのかを解説します。

パイロットの前にはいくつものディスプレイが並び、頭上には大量のスイッチや計器、中央にはレバーやボタンが配置されています。一見すると、どこに何があるのか分からないほど複雑に見えるかもしれません。

しかし、コックピットのレイアウトは決して無秩序に設計されているわけではありません。それぞれのエリアには明確な役割があり、パイロットはそれらを使い分けながら、航空機のシステムを管理し、飛行を計画し、自動操縦を操作し、機体の状態を監視し、そして実際に航空機を操縦しています。

今回は、ボーイング737のコックピットを大きく7つのエリアに分け、それぞれがどのような役割を担っているのか、全体像から見ていきましょう。

コックピットは7つのエリアに分けて考えられる

旅客機のコックピットは、役割ごとに大きく次の7つのエリアに分けて考えることができます。

01航空機システムの管理Overhead Panel
02自動操縦・オートフライトの管理MCP
03航空機の状態を確認Flight Instruments
04飛行計画・航法・性能計算FMC / CDU
05推力・フラップ・スポイラーの操作Center Pedestal
06通信・航法・監視システムAft Pedestal
07航空機そのものを操縦Flight Controls

もちろん、これらは完全に独立しているわけではありません。むしろ、それぞれのシステムが連携することで、航空機は安全かつ効率的に飛行することができます。では、それぞれの役割を見ていきましょう。

01

Overhead Panel — 航空機のシステムを管理する

OVERHEAD PANEL

パイロットの頭上に広がっているのが、Overhead Panel(オーバーヘッドパネル)です。ここには、航空機を飛行させるために必要なさまざまなシステムのスイッチや表示があります。

  • 電気系統(Electrical)
  • 燃料系統(Fuel)
  • 油圧系統(Hydraulic)
  • 空調・与圧・空気圧系統(Pneumatic / Air Conditioning)
  • エンジン・APU
  • 防氷装置(Anti-Ice)
  • 火災検知・消火システム(Fire Protection)
  • 各種ライト

オーバーヘッドパネルは、航空機の「システム管理センター」

「航空機にはどこから電気が供給されているのか」「燃料はどのタンクからエンジンへ送られているのか」「油圧は正常なのか」「エンジンの始動に必要な空気はどこから供給されているのか」「機体に着氷する可能性がある場合、どの防氷システムを使用するのか」。こうした、航空機を飛ばすための基礎となるシステムを管理するのが、このエリアです。

オーバーヘッドパネルについては、今後の記事で各システムをさらに詳しく解説していきます。

02🎛️

MCP — 航空機の自動化を管理する

MODE CONTROL PANEL

パイロットの正面、フライトディスプレイの上に配置されているのが、MCP(Mode Control Panel)です。MCPは、航空機のオートフライトシステム(Autoflight System)を操作するための重要なパネルです。

パイロットはMCPを使って、次のようなモードや目標値を設定します。

  • 速度 / 針路(Heading) / 高度 / 上昇・降下率
  • LNAV / VNAV / APP(Approach)
  • Autothrottle / Autopilot

例えば、パイロットがMCPで高度を10,000ftに設定すると、オートフライトシステムは選択されたモードに従って、その高度へ向かうための飛行を行います。

ここで重要なのは、MCPが「飛行経路そのものを計算する場所」ではないということです。MCPはあくまで、パイロットが航空機の自動化に何をさせたいのかを設定するためのインターフェースです。では、飛行経路や性能の計算はどこで行われるのでしょうか。それが次に紹介するFMCです。

03🛫

Flight Instruments — 航空機が今どうなっているかを見る

FLIGHT INSTRUMENTS

パイロットの正面にあるディスプレイは、航空機の状態を把握するための重要な情報源です。ボーイング737では、特にPFD(Primary Flight Display)とND(Navigation Display)が中心的な役割を担います。

PFD — Primary Flight Display

速度・高度・姿勢・上昇/降下率・フライトディレクター・オートフライトのモード情報など、飛行そのものに関する重要な情報が表示されます。

ND — Navigation Display

飛行経路・ウェイポイント・航法情報・Heading・Track・航法援助施設・気象情報・トラフィック情報などが表示されます。

ここで、MCPとの関係が見えてきます。

MCP「航空機をどう飛ばしたいか」→ PFD / ND「航空機が実際にどう飛んでいるか」

パイロットは常にこの2つを意識しながら、航空機の状態を監視しています。

04💻

FMC / CDU — 飛行を計画し、計算する

FLIGHT MANAGEMENT COMPUTER

パイロットの膝の近く、センターペデスタル上に配置されているのが、FMC(Flight Management Computer)と、それを操作するCDU(Control Display Unit)です。FMCは、航空機の飛行計画や航法、性能に関するさまざまな計算を行います。

  • 飛行経路 / SID・STAR / ウェイポイント
  • 上昇・巡航・降下 / 速度
  • 燃料予測 / 航法 / 性能計算

パイロットがCDUから飛行計画を入力すると、FMCがその情報をもとに飛行経路や性能に関する計算を行います。そして、その情報は航空機の航法・オートフライトシステムとも連携します。

飛行計画をFMCへ入力 → FMCが航法・性能情報を計算 → LNAV / VNAVなどがその情報を利用 → オートフライトシステムが航空機を誘導

そのため、FMCは現代の旅客機における飛行計画・航法・性能管理の中心的なコンピューターと言えるでしょう。

05🎚️

Center Pedestal — 推力と航空機の形を管理する

 

CENTER PEDESTAL

2人のパイロットの間にあるのが、Center Pedestal(センターペデスタル)です。ここには、航空機の推力や機体のコンフィギュレーションを管理するためのさまざまなコントロールがあります。

  • Thrust Levers(スラストレバー)
  • Speed Brake / Spoiler Lever
  • Flap Lever
  • Stabilizer Trim

Thrust Levers — エンジンの推力をコントロールします。離陸時には必要な推力を設定し、巡航や降下、着陸では状況に応じてエンジン推力を調整します。

Flap Lever — 主翼のフラップを操作します。フラップは離着陸時などに使用され、低速で必要な揚力を確保しやすくするなど、航空機の空力特性を変化させます。

Speed Brake / Spoiler — スポイラーを使用して抗力を増やし、航空機の減速を助けます。

Stabilizer Trim — 水平安定板を調整し、航空機を飛行させるために必要な操縦力を適切にする役割があります。

このように、センターペデスタルは「航空機の推力とコンフィギュレーションを管理する場所」と考えることができます。

06📡

Aft Pedestal — 通信・航法・監視

 

AFT PEDESTAL

センターペデスタルの後方には、通信・航法・監視に関係するコントロールが配置されています。機体の仕様によって構成は異なりますが、代表的なものは次のとおりです。

  • Communication — VHF Radio / 通信周波数の設定
  • Navigation — VOR / ADF / 航法周波数の設定
  • Surveillance — TCAS / トランスポンダー
  • Weather — Weather Radar

つまり、このエリアでは「誰と通信するのか」「自分たちはどこにいるのか」「周囲にどのような航空機がいるのか」「前方の天候はどうなっているのか」といった情報を扱います。

航空機を飛ばすためには、機体を操縦するだけでなく、周囲の状況を正確に把握し、ATCなどと適切にコミュニケーションを取ることも重要です。

07🕹️

Flight Controls — 航空機そのものを操縦する

FLIGHT CONTROLS

そして最後が、実際に航空機を操縦するためのFlight Controls(フライトコントロール)です。航空機の基本的な運動は、主に3つの軸で考えることができます。

Aileron → Roll — 左右のバンクをコントロールします(右へ傾く/左へ傾く)。

Elevator → Pitch — 機首の上下方向の動きをコントロールします(機首上げ/機首下げ)。

Rudder → Yaw — 機首の左右方向の動きをコントロールします(機首を左へ/右へ)。

パイロットは主に操縦桿(Yoke)とラダーペダルを使用してこれらを操作します。普段「飛行機を操縦する」と聞いて最初に思い浮かべるのは、この部分かもしれません。

しかし、実際の旅客機の操縦では、Flight Controlsだけを操作しているわけではありません。システム、航法、オートフライト、エンジン、通信など、コックピット全体を使って航空機を運航しています。

7つのエリアは、それぞれ独立しているわけではない

ここまで7つのエリアを見てきましたが、最も重要なのは、これらが一つのシステムとして連携しているということです。例えば、飛行を開始するまでを考えてみましょう。

起動から離陸準備までの流れ

Overhead Panel — 航空機の各システムを準備する

Electrical → Fuel → Hydraulic → Pneumatic → Engine / APU

FMC — 飛行計画や性能情報を入力・計算する

Route → Departure → Arrival → Performance

MCP — オートフライトのモードや目標値を設定する

Speed → Heading → Altitude → Autoflight Modes

Center Pedestal — 推力やコンフィギュレーションを管理する

Thrust → Flaps → Speed Brake → Trim

Flight Controls — 必要に応じて航空機を直接操縦する

Pitch → Roll → Yaw

Flight Instruments — 航空機が現在どのような状態かを確認する

PFD → ND → Aircraft Status

Aft Pedestal — 航空機の外部環境との情報交換を行う

Communication → Navigation → Traffic → Weather

コックピットは「スイッチがたくさんある場所」ではない

ボーイング737のコックピットを見ると、最初は大量のスイッチやディスプレイに圧倒されるかもしれません。しかし、その一つひとつには役割があり、コックピット全体も明確な目的ごとに整理されています。

Overhead Panel は、航空機のシステムを管理する。

MCP は、オートフライトのモードや目標値を管理する。

Flight Instruments は、航空機の状態を表示する。

FMC は、飛行計画・航法・性能に関する計算を行う。

Center Pedestal は、推力や航空機のコンフィギュレーションを管理する。

Aft Pedestal は、通信・航法・監視に関するシステムを扱う。

Flight Controls は、航空機そのものを操縦する。

これらが互いに連携することで、パイロットは航空機を安全かつ効率的に運航することができます。

次回予告

👨‍✈️ 次回から、さらに詳しく

今回の記事では、旅客機のコックピットを「全体像」として紹介しました。しかし、それぞれのエリアには、さらに多くのシステムと機能があります。次回は、パイロットの頭上に広がる「Overhead Panel」に注目し、航空機の電気・燃料・油圧・空気圧などのシステムがどのように管理されているのかを詳しく見ていきます。

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