羽田空港の「曲がる」アプローチ
RJTT LDA W RWY 22を徹底解説

羽田空港・東京国際空港(RJTT)には、世界的に見ても非常に特徴的な進入方式があります。
そのひとつが、LDA W RWY 22 Approachです。
通常のILS進入では、ローカライザーによって滑走路中心線へ向かって一直線に進入し、グライドスロープによって降下します。
ところが、羽田のLDA RWY 22では事情が大きく異なります。
航空機はまず、滑走路とは大きく異なる方向からローカライザーに沿って進入。
そしてMAPt(Missed Approach Point)を通過した後、目視による所定の経路に沿って旋回し、RWY 22へ向けて着陸します。
その角度はなんと55°。
つまり、滑走路の真正面から入ってくるのではなく、最後の段階で大きく向きを変えて滑走路へ進入する、非常に特徴的なアプローチなのです。
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そもそも「LDA」とは?
LDAは、Localizer Type Directional Aidの略です。
名前の通り、ローカライザーに似た横方向の誘導を利用する進入方式ですが、通常のILSとは異なり、滑走路中心線と進入コースが一致していません。
ILSでは、
- Localizer:左右方向
- Glide Slope:上下方向
という2つのガイダンスによって、滑走路へ向けて精密に進入できます。
一方、LDAでは基本的に横方向のガイダンスが中心となり、垂直方向についてはチャート上の高度制限などを確認しながら、パイロット自身が適切な降下パスを作っていきます。
そのため、LDA RWY 22はILSとは飛び方が大きく異なります。
なぜ羽田では、こんなに大きくオフセットしているの?
ここがLDA RWY 22最大のポイントです。
RWY 22の滑走路方位は222°。一方、LDAの最終進入コースは277°です。
つまり、277° − 222° = 55°となります。
ローカライザーの進入コースと滑走路中心線が、実に55°もずれているのです。
では、なぜこのような進入方式が必要なのでしょうか?
大きな理由のひとつが、東京の市街地上空をできるだけ避けながら羽田へ進入することです。
南風時の羽田では、RWY 22・23が到着に使用されることがあります。
LDA RWY 22では、東京湾上空を進みながらローカライザーに乗り、その後、羽田周辺で目視による所定の経路へ移行します。
つまり、単純に「滑走路へ最短距離で向かう」のではなく、
航空機の安全性・航空交通・騒音・周辺環境
など、さまざまな要素を考慮して設定された進入方式なのです。
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LDA W RWY 22はどこから始まる?
LDA RWY 22では、IKL 110.1 MHzのローカライザー/LDAを使用します。
最終進入コースは277°。
その先に、BONDO(FAF)が設定されています。
現在公開されているチャートでは、BONDOはIKLから12.7 NMの位置にあり、BONDOの通過高度は5,000 ftとされています。さらに、その先にはBEASTなどのフィックスが設定されています。
この区間では、単純に「ローカライザーに乗って降りればいい」というわけではありません。
複数の高度制限をクリアしながら、最終進入へ向けて航空機を安定させていきます。
LDA RWY 22で重要な「降下計画」
LDA RWY 22を理解するうえで、ILSとの大きな違いになるのが垂直方向のガイダンスがないことです。
ILSであればグライドスロープに沿って降下できます。
しかしLDAでは、パイロットがチャート上の高度制限や距離を確認しながら、自分で適切な降下パスを作る必要があります。
特にBONDO以降では、
「どの高度でMAPtへ到達するか」を意識した降下計画が重要になります。
最終的なMDAは1,000 ft。
つまり、MAPt付近では滑走路を視認できる状態を想定しながら、適切な高度を維持して進入します。
もうひとつのポイント「Procedural Speed」
羽田空港の進入方式では、航空交通をスムーズに流すために、進入方式ごとのProcedural Speedが設定されています。
LDA RWY 22では、
IKL D8.0:180 kt
IKL D3.0:160 kt が公示されています。
これらは単なる「おすすめ速度」ではなく、管制上の条件を確認したうえで従う必要がある速度です。
ただし、ATCから速度制限を無効にする指示があった場合などは取り扱いが変わります。
また、航空機の性能などによって遵守できない場合にはATCへ通報する必要があります。
このように、LDA RWY 22では、
航法・降下・速度・周辺交通
を同時に管理する必要があります。
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最大の見どころ「MAPtからの大旋回」
そして、LDA RWY 22最大の特徴がここです。
航空機はLDAに沿って277°で進みます。しかし、RWY 22は222°。
そのままでは滑走路に正対できません。
そこでMAPtであるD1.1 IKLを通過した後、目視によるVisual Prescribed Track(VPT)へ移行します。
VPTとは、MAPt以降に飛行する所定の視覚的経路のことです。
つまり、パイロットが自由に好きなルートを飛ぶのではなく、チャートに定められた経路に沿ってRWY 22へ向かいます。
ここから、いよいよ「LDA RWY 22らしい」飛行になります。
なぜMAPtの前に左へ曲がってはいけない?
チャートを見ると、MAPtはD1.1 IKL。
そして、ここには非常に重要な注意事項があります。
MAPtを通過するまでLDAから離れてはいけません。
これは単に「正しい経路を飛ぶため」というだけではありません。
羽田ではRWY 22とRWY 23への進入が同時に行われることがあり、両方の進入経路の間にはNo Transgression Zone(NTZ)が設定されています。
そのため、LDA RWY 22ではMAPtまでローカライザーに沿って飛行し、所定の地点を通過してからVisual Prescribed Trackへ移行することが重要になります。
ここが、LDA RWY 22が単なる「変わった着陸方法」ではなく、周辺の航空交通を含めて設計された高度な進入方式である理由のひとつです。
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そしてRWY 22へ
MAPtを通過すると、パイロットは目視による所定の経路に沿ってRWY 22へ向かいます。
チャート上のVPTでは、RWY 22の方位である222°へ向けて旋回し、滑走路にアラインしていきます。
この区間は非常に短く、公開されているチャートでは、MAPt以降の所定経路の最終区間は1.8 NM。
その距離は、160 ktで飛行した場合の約30秒を基準として設定されています。
つまり、
ローカライザーに乗る
↓
MAPt通過
↓
目視
↓
旋回
↓
RWY 22へアライン
↓
着陸
という流れになります。
「最後にちょっと曲がる」というレベルではありません。
55°のオフセットを、短い距離の中で修正する。
これこそが、LDA RWY 22の最大の特徴です。
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なぜ「LDA W」なの?
チャートを見ると、LDAには
- LDA W RWY 22
- LDA Z RWY 22
- LDA X RWY 22
など、複数の方式があります。
これは単純に「同じアプローチの名前違い」ではありません。
同じRWY 22に対しても、到着経路や運用条件などに応じて異なる進入方式が設定されています。
特にLDA W RWY 22は、南風時の羽田で特徴的な運用のひとつとして知られています。
また、LDA W RWY 22には騒音低減やTCAS-RA回避の観点から、一定の区間で連続降下を行うことが推奨されています。公開資料では、BACONからBEASTの間で1,500 ft/min以下の降下率で連続降下することが示されています。
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LDA RWY 22の難しさは、ひとつの要素だけではありません。
① 横方向のガイダンス
まずは277°のLDAコースを正確に維持する必要があります。
② 高度管理
ILSのようなグライドスロープがないため、自分で適切な降下パスを作ります。
③ 速度管理
180 kt、160 ktというProcedural Speedを意識しながら、最終進入へ向けて減速します。
④ MAPtの認識
D1.1 IKLを基準に、LDAからVPTへ移行するタイミングを正確に判断します。
⑤ 目視による旋回
最後は滑走路を目視しながら、短い距離でRWY 22へアラインします。
つまりLDA RWY 22は、
「航法だけ」でも「操縦だけ」でもありません。
航法、計器、速度、高度、視覚情報、そして交通状況を総合的に処理する必要があるアプローチなのです。
もし滑走路が見えなかったら?
もちろん、ここも重要です。
LDA RWY 22では、MAPt付近で必要な視覚的情報を得られない場合、無理に着陸を続けることはできません。
その場合はMissed Approach(進入復行)となります。
公開されているチャートでは、MAPtから右旋回し、HME VOR R-015 / SYE VOR R-195を経由してKASGAへ向かい、4,000 ftでホールドする手順が設定されています。
このように、LDA RWY 22は「最後に曲がって着陸する特殊なアプローチ」というだけではなく、
見えなかった場合にどう復行するかまで含めて、ひとつの進入方式として設計されています。
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まとめ
羽田空港のLDA W RWY 22は、一般的なILSアプローチとは大きく異なる、非常に特徴的な進入方式です。
ポイントをまとめると、
- LDA=Localizer Type Directional Aid
- 最終進入コースは277°
- RWY 22の方位は222°
- その差は55°
- LDAにはILSのようなグライドスロープがない
- BONDO(FAF)などの高度制限を確認しながら降下
- IKL D8.0で180 kt、D3.0で160 ktのProcedural Speedが設定されている
- D1.1 IKLがMAPt
- MAPt通過後はVisual Prescribed Trackへ移行
- 最終的にRWY 22へ旋回して着陸
- 必要な視覚情報が得られなければMissed Approach
一見すると「最後に大きく曲がる変わったアプローチ」に見えるLDA RWY 22。
しかし、その背景を知ると、
「なぜこのルートなのか」が見えてきます。
羽田空港を利用する際、もしRWY 22への着陸になったら、窓の外だけでなく、航空機がどのようなルートを飛んでいるのかにも注目してみてください。
普段何気なく見ている羽田への着陸も、進入方式を知ることで、まったく違った景色に見えてくるはずです。
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