
前編では、日本でエアラインパイロットを目指す4つのルートと、必要な資格について解説しました。
後編では、「社会人からでもパイロットになれる?」「眼鏡をかけていても大丈夫?」「身体検査では何を確認される?」といった疑問に答えます。年齢や視力、健康状態など、パイロットを目指すうえで気になる条件を中心に解説します。
先に結論|パイロットを目指すうえで気になる条件
目指せる・使える
条件付き・要確認
それぞれ詳しく見ていきましょう。
パイロットになるには何歳まで?ルート別の年齢条件

パイロットを目指すうえで、年齢は進路を考える際の重要な条件です。ただし、すべてのルートに共通する年齢制限があるわけではありません。航空大学校への進学、航空会社への入社、民間のフライトスクールでの訓練など、選ぶルートによって条件が異なります。
新卒向けの自社養成では、大学などの卒業・修了見込みが応募条件となる募集が一般的です。一方、社会人経験者を対象としたキャリア採用を行う航空会社もあります。
年齢や学歴などの条件は会社や採用区分によって異なります。社会人から目指す場合は、キャリア採用の有無と、最新の募集要項を確認しましょう。
大学の操縦士養成課程では、入学資格や年齢条件が学校ごとに定められています。民間のフライトスクールも、入学条件や年齢の上限は施設によって異なります。
ただし、養成課程に入学できることと、航空会社に採用されることは別です。訓練費用や必要な資格だけでなく、卒業後の進路や採用条件も確認しておきましょう。
航空大学校には、出願できる年齢の範囲が定められています。
令和9年度の募集では、2002年4月2日から2007年4月1日までに生まれた方が対象です。年齢に加え、大学での在学・単位取得状況や、短期大学・高等専門学校などの学歴に関する条件もあります。
詳しくは、航空大学校の令和9年度学生募集要項で確認できます。
航空学生は、自衛隊のパイロットを養成する制度です。令和8年度の募集では、航空自衛隊は18歳以上24歳未満、海上自衛隊は18歳以上23歳未満が年齢条件の基本となっています。高校卒業者や高等専門学校の第3学年修了者など、学歴にも条件があります。
応募資格は募集年度によって変わる可能性があるため、最新の募集要項を確認してください。
※上記は令和8〜9年度の募集情報などをもとにした案内です。年齢や応募条件は年度ごとに変更される場合があります。応募前には必ず最新の募集要項を確認してください。
航空大学校や航空学生には年齢条件がある一方、航空会社のキャリア採用や民間の養成課程など、社会人から検討できる選択肢もあります。年齢だけで諦めず、自分の学歴や経歴に合うルートを探してみましょう。
航空身体検査とは?パイロットに必要な健康基準

パイロットには、操縦に必要な知識や技能だけでなく、安全に業務を行える健康状態も求められます。そのため、操縦士の技能証明とは別に、航空身体検査証明が必要です。
航空会社の運航乗務員として乗務するには、原則として第一種航空身体検査証明の基準を満たす必要があります。検査では、視力や聴力、循環器系など、航空業務に関わる身体機能を確認します。
航空身体検査証明には有効期間があり、年齢や乗務する航空機などによって異なります。資格を取得した後も定期的に検査を受け、基準を満たし続けなければなりません。
最新の基準や指定医については、国土交通省「航空従事者の医学適性や航空身体検査の証明について」をご確認ください。
眼鏡をかけていてもパイロットになれる?
眼鏡を使用していても、必要な基準を満たせばパイロットを目指せます。
航空身体検査では、裸眼視力だけでなく、矯正視力やレンズの度数なども確認します。眼鏡を使用する場合は、予備の眼鏡の携帯など、所定の条件を満たす必要があります。
第一種航空身体検査の視力基準
第一種航空身体検査の遠見視力基準では、次の条件が定められています。
裸眼で基準に達していれば、眼鏡は不要です。達していない場合も、矯正して基準を満たせば適合します。
コンタクトレンズも常用眼鏡として使用できますが、初めて使用する場合は1か月以上の順応期間が必要です。また、多重焦点型や色付きのコンタクトレンズなど、使用できないものも定められています。
なお、航空会社の採用条件は、航空身体検査の基準と必ずしも同じではありません。応募時には、希望する会社の最新の募集要項も確認してください。
※ジオプトリー(D)は、レンズの屈折度を表す単位です。
レーシックなどの視力矯正手術を受けていても大丈夫?
レーシックなどの屈折矯正手術の既往歴は、航空身体検査では原則として不適合の扱いです。ただし、手術から6か月以上が経過し、症状が安定して視機能の基準を満たしている場合は、適合となります。
この場合、眼科専門医の診断で、検査結果に異常がないことが確認されます。通常の視力基準を満たしているだけでは、適合とは判断されません。
また、航空身体検査上の扱いと、航空会社や養成機関の応募条件は必ずしも同じではありません。
これから視力矯正手術を検討している方は、手術を受ける前に、航空身体検査を実施する指定医や希望する航空会社に相談しましょう。 すでに手術を受けている場合も、自己判断せず、個別に確認することをおすすめします。
オルソケラトロジーによる矯正は?
オルソケラトロジーは、就寝中に専用のコンタクトレンズを装用し、角膜の形状を一時的に変化させて近視などを矯正する方法です。
航空身体検査では、オルソケラトロジーによる矯正は不適合の扱いです。 一般的な眼鏡やコンタクトレンズとは異なるため、使用している方や使用を検討している方は、事前に指定医や希望する航空会社に確認してください。
色覚に不安がある場合は?
航空身体検査では、色を正しく識別できるかどうかも確認します。
検査表による検査で基準を満たさなかった場合でも、追加検査によって適合と判断される可能性があります。ただし、追加検査の方法や判定は、定められた基準に基づいて行われます。
色覚に不安がある場合は、検査表の結果だけで判断せず、指定医に相談しましょう。
身長に制限はある?
航空大学校では、令和8年度の募集から、出願資格に設けられていた身長制限が撤廃されました。
ただし、身長の条件がなくなったからといって、身体的な条件がすべてなくなったわけではありません。第三次試験では飛行訓練装置を使った操縦適性検査があり、通常の操縦姿勢で訓練を支障なく行えるかどうかも確認されます。
航空会社や養成機関によって条件が異なる場合もあるため、希望する進路の募集要項を確認しましょう。
病気や既往歴があってもパイロットになれる?
病気や過去の治療歴があっても、それだけで一律に不適合と決まるわけではありません。航空身体検査では、病名だけでなく、症状や検査結果などを踏まえ、該当する基準に沿って判断されます。
基準を満たさない項目がある場合でも、検査結果などを添えて、国土交通大臣の判定を申請できる場合があります。ただし、航空大学校の入学試験では、国土交通大臣の判定が必要な場合は、募集要項上、基準を満たさないものとして扱われます。 養成機関ごとの条件は、募集要項で確認してください。
健康面に不安がある場合は、本格的に訓練を始める前に、航空身体検査を実施する指定医に相談しておくとよいでしょう。
パイロット志望者向けの事前検査を実施している医療機関もあります。ただし、受検できる条件や検査内容は医療機関によって異なります。技能証明を持っていない方が受検できるかどうかも含め、事前に問い合わせてください。
パイロットに向いている人の特徴

パイロットには、学力や操縦技術だけでなく、状況に応じた判断力や自己管理能力、継続的に学ぶ姿勢も求められます。特に、安全運航を支えるうえで重要なのが次の3つです。
1. 判断力・コミュニケーション能力
飛行中は、機体の状態や気象、周囲の航空機の動きなどを継続的に確認し、状況に応じて判断する必要があります。また、機長と副操縦士が情報を共有し、互いに確認することや、管制官と正確に交信することも欠かせません。
自分の判断だけに頼らず、必要な情報を共有し、疑問や懸念があれば伝えること。こうした連携が安全運航を支えます。
2. 自己管理能力・責任感
パイロットには、睡眠や体調を管理し、業務に必要な心身の状態を維持することが求められます。また、定められた手順や規程を守り、自身の判断や行動に責任を持つことも欠かせません。
自分の間違いや知識不足を素直に認め、必要に応じて周囲に確認や助言を求める姿勢も、安全運航を支える大切な要素です。
3. 継続的に学び、成長する姿勢
パイロットの学びは、資格取得後も続きます。知識を更新し、定期的な訓練や審査を通じて、必要な知識と技能を維持・向上させていく必要があります。
日々の運航や訓練を振り返り、自分の課題を把握して改善につなげることも大切です。経験を積むだけでなく、その経験から学び続ける姿勢が、パイロットとしての成長につながります。
これらの能力を、最初からすべて十分に備えている必要はありません。自分の課題を認識し、学習や訓練を通じて改善を重ねていくことが大切です。
英語力はどのくらい必要?
パイロットは、航空無線や運航に関する情報の確認など、英語を使う場面があります。管制通信では定められた表現が使われますが、指示や情報を正確に理解し、必要な内容を伝える力も求められます。
必要な英語力は、航空会社や採用区分によって異なります。採用条件の一例として、TOEIC750点程度以上を応募条件としている募集もあります。ただし、これはすべての航空会社に共通する基準ではありません。
採用試験だけでなく、その後の訓練でも英語を使うため、早い段階から学習を続けておくとよいでしょう。
数学・物理が苦手でもパイロットになれる?
文系・理系という区分だけで、パイロットへの向き不向きが決まるわけではありません。
一方、飛行機の仕組みや飛行中の現象を理解するには、基礎的な物理の知識が役立ちます。速度・距離・時間の計算や、数値から状況を読み取る力も必要です。
求められる学力や試験内容は、航空会社や養成機関によって異なります。数学や物理が苦手な場合も、志望するルートで必要となる学習内容を確認し、基礎から取り組んでみましょう。
まとめ|社会人からでも道はある。まずは自分の条件を確認しよう

今回のポイントを振り返ります。
パイロットを目指すなら、まずは次の4つから始めてみましょう。
最初からすべてを決める必要はありません。情報を集め、自分に合ったルートと必要な準備を整理することが、目標への第一歩になります。Skyart JAPANでは、パイロットを目指す方からの進路相談にも、インストラクターが経験や知識をもとにお答えしています。
また、フライトシミュレーターで旅客機の操縦を体験することもできます。パイロットの仕事や操縦に興味がある方は、ぜひ一度、操縦体験にお越しください。
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